当社新開発のヘッドスピーカーF01W / F01BがStereo誌14-15ページに掲載されました。
月刊誌:Stereo
掲載号:2018年10月号
発売日:2018/9/19
出版社:音楽之友社
-以下、原文抜粋-
取材・文=山之内正
業務用平面型スピーカーで培ったノウハウを惜しみなく投入
満を持して世に問う “へッドスピーカー”
平面駆動型ヘッドフォンの支持が着実に広がっている。特に普段はスピーカーを愛用する音楽ファンからの評価が高いのは、良い意味でヘッドフォンらしくない自然な鳴り方に理由がありそうだ。そんななか平面型ならではの自然なサウンドを独自技術で追求したその名も「ヘッドスピーカー」が登場。手がけたのは平面スピーカー専門メーカーのFPSで、今回紹介するF01 W/Bは同社のコンシューマー向けモデルの第1弾となる。同社の山本正人氏と中林亨氏にお話を伺いながら、注目機の中身を検証していこう。
屋外ビジョンや駅のホームで広く採用されているFPS
FPSはフラット・パネル・スピーカーの略で、文字通り平面型スピーカーの専門メーカーだが、製品の大半が商業用途なので一般的な意味での知名度は高くない。屋外ビジョン、駅のホーム、大学の教室などが主な納人先とのことなので、私たちは意識することなく同社製スピーカーの音に接しているはずだ。直進性が高く中高域が明瞭という特徴を活かし、「届けたいところに確実に音を届ける」用途で威力を発揮するという。F01にはその平面型ユニットの技術を投入しているわけだが、既存の平面駆動モデルとの違いを打ち出すためにBluetooth(aptX・LL対応)を搭載し、密閉型構造を選択して屋外での利用も視野に入れている。もちろん有線接続でも使えるが、音質補正用にDSPを内蔵するため、どちらにせよ電源を入れなければ音が出ない。基本操作は右側ハウジング部に内蔵したタッチスイッチを利用し、選曲や音量調整もプレーヤーに触れずに行えるように工夫されている。
長時間聴いても疲れにくい平面型ユニットの特性を活かす
音のコンセプトと開発の裏話を中林氏に尋ねると「長時間聴いても疲れにくい音を目指しました。音質補正用にDSPを内蔵していますが、低音はほとんど補正せず、中域のピークを抑えたり高域のバランスを整えるために4バンドのパラメトリック・イコライザーでチューニングしました。平面型は一般的に低音の音圧を引き出しにくい弱点があるのですが、ヘッドフォンに導入してみると意外なほど力強い低音が出てきたので、信号処理で強調することはしていません。ハウジングの剛性を高めて共振を抑えることで、低音の力強さが出てきたという側面もあります」と紹介してくれた。ハウジング側面に曲線を描く部分が見えるが、そこに音響的な開口部があるわけではなく、デザイン上の造形らしい。ヘッドスピーカーという聴き慣れない呼び方を採用したことについて山本正人氏は「ヘッドフォンの特殊な音場ではなく、スピーカーを聴いているような自然な音を指した製品なので、そのコンセプトを伝えるためにあえてヘッドスピーカーと呼ぶことにしました。平面型ユニットの良さをできるだけリーズナブルな価格で楽しんでいただくことができます。コーン型ユニットとは異なり平面波で音が伝わるので、ヘッドフォンユーザーの方は最初に違和感をおぼえるかもしれませんが、少し長めの時間をかけて聴いていただくと、スピーカーに近いサウンドの良さを体感していただけると思います」と語る。
既存のヘッドフォンの音に馴染めない人にこそ聴いてほしい
長時間聴いても疲れにくい製品を実現するためには装着感も重要なポイントとなる。F01は柔らかい素材のイヤーパッドと厚めのヘッドバンドを採用して側圧を適切に分散、300グラムという重さをあまり感じさせない。駆動時間も幻時間と余裕があり、充電の手間を気にかけなくて済みそうだ。肝心の再生音は設計者の狙い通り、長時間聴いても疲れにくいことが最大の美点である。この価格帯のヘッドフォンではヘビーウェイトな低音と張り出しの強い中高域が依然として好まれるようだが、本機のサウンドはそれとは正反対で、誇張のない低音と控えめと言ってもいいぐらいの落ち着いた中高域に持ち味がある。ヘッドフォンで聴くと作り手さえ意図しなかったほどにデイテールや楽音以外のノイズが聞こえてしまうことがあるが、F01ではそうした違和感はなく、たしかにスピーカーの鳴り方に近いと感じた。振動板と耳の間にそれなりの距離と空間が介在するので、鼓膜の匝近で鳴る違和感がなく、その点でもスピーカーを聴いている感覚に近い。既存のヘッドフォンに違和感をお持ちの方は一度試してみることをお薦めする。
※ヘッドスピーカーF01は9月中旬より、ヨドバシカメラ(AKIBA、新宿西口、横浜、梅田、博多)で試聴可能