2020年4月17日
株式会社エフ・ピー・エス
新型コロナウイルス迅速検出キットの開発について
~3分以内に検出可能な検査キットの発売を目指します~
株式会社エフ・ピー・エス(本社:岐阜県大垣市 社長:堀昌司)は、早稲田大学(本部: 東京都新宿区、総長: 田中愛治)先進理工学研究科の武岡真司教授の研究グループと共同で、温度応答性蛍光リポソーム結合免疫吸着法『TLip-LISA法』による新型コロナウイルス検出キットの開発を進めております。TLip試薬を用いた検査キットによって、新型コロナウイルスを3分以内に検出することを目指します。
当社は、各種研究機関、公的機関の協力を仰ぎながらTLip-LISA法の特長である迅速検出、超高感度、簡便な方法で新型コロナウイルス検出ができるようにします。
TLip とは?
リン脂質分子膜から構成されるナノ粒子(リポソーム)は、ある温度 (ゲル-液晶相転移温度)を境に膜物性が大きく変化する。特殊な蛍光分子を膜中に導入したリポソームは、室温では全く光らないがある温度以上になると明るく赤色に光る性質(温度応答性)を持つ(図1)。シグナル/ノイズ比は 60 倍以上、温度感度は 20%/℃と世界最高レベルを持ち、転移温度も調節できる。
TLip-LISA
ELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:酵素結合免疫吸着) 法は、サンプル中の抗原を検出・定量する方法として、現在広く用いられている。中でもサンドイッチ法は 2 種類の抗体を用いて抗原をサンドイッチするために特異性が極めて高いものの、酵素反応を利用した検出には一定の時間がかかるのが難点である。本TLip-Linked ImmunoSorbent Assay 法(TLip-LISA 法)では、検出に TLip試薬を用いている。前立腺がんのスクリーニング検査に用いられるPSAを抗原として用いた試験において、基板にPSA抗原の捕捉抗体を結合させてサンプル中の抗原を基板に捕捉し、検出抗体を結合させた TLipでサンドイッチ状態にして加温すると、基板に結合した TLip のみが速やかに光る(図2)。他方、抗原がないサンプルでは水が温められてから TLip が光るので、その時間差を利用して抗原を1分以内に検出することができる。
本TLip-LISA と現行の ELISA法との性能比較
PSA抗原の検出について本TLip-LISAと現行のELISA法を比較した(表1)。感度は現行のELISA法の1千万倍の感度、現行と同等の抗原に対する高い特異性を保持した状態で1分以内に抗原を検出できることを確認した。
表1.本TLip-LISA法と一般的なELISA法との性能比較
項目 | TLip-LISA | Digital ELISA*1 | 現行 ELISA*2 |
感度 | ELISA法の107倍(1 ag/mL) | ELISA法の104倍(1 fg/mL) | 8 pg/mL |
検出法 | 相転移による103-104個蛍光分子の発光 | 蛍光法、酵素法(時間依存) | 紫外-可視吸光法、酵素法(時間依存) |
反応時間 | <1 分 | 5-6 時間 | ~30 分 |
特異性 | サンドイッチ法 | サンドイッチ法 | サンドイッチ法 |
*1. Rissin, D. M., et al., (2010). Single-molecule enzyme-linked immunosorbent assay detects serum proteins at subfemtomolar concentrations. Nature Biotechnology,28(6), 595-599.
*2. https://www.sigmaaldrich.com/catalog/product/sigma/rab0331?lang=en®ion=US
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